むかしむかし、あるところにムーミントロールという白くて丸いムーミン族の男の子がいました。
今彼には大きな役目があり、ムーミンはとても張り切っています。
皆さん、ムーミンコミックス展に足を運んでみてください。きっと彼が皆さんを出迎えてくれるでしょうから。
ということで、みんな大好きムーミンの「ムーミンコミックス展」に行ってきましたよ!
企画展情報
去年の9月に東京スタートで巡回してます。
次は神奈川のそごう美術館です。
名古屋は博物館開催なので普段の美術館とはまた違う印象がありますね。日曜に行ったのでかなり混雑してました。宣言後ってすごい……。
ファミリーが多い様子でしたが、若い方も多かったですね。あるいはマダム。
でもひとりで来てる人はあまりいなかったんだよなあ(遠い目)。
展示作品について
おいでませムーミン沼
展示室に入ると、ぽつぽつと展示されたスケッチやペン画の数々。
気楽に楽しめるかなと思わせる雰囲気でした。
ですがそれは半分正解、半分不正解なのです。
ムーミンシリーズは新聞掲載のコミックス・絵本・小説その他エトセトラ、多岐に渡って展開されています。展示紹介にもありましたが、新聞掲載期間は21年と長寿。コミックスは全73作品にもなります。
今回の構成では第1話をスタートにその話のラフスケッチ数枚やキャラクターの図案が順々に展示されていきます。
ゆえに作品点数がめちゃくちゃ多いんです。
絵描き人のスケッチブックを覗いたと思ってみてください。数枚しかないスケッチブックなんて、想像しませんよね。
だから「こういう風にコマ割りしてるんだ!」とか「キャラクターのセリフや動きのなんとユニークか!」とか。学ぶことの多い刺激的な時間になるでしょう。
こういう展示構成ですと、サクサク割り切って観るタイプと食い入って観るタイプそれぞれ所要時間が異なってくるかと思います。
がっつり観るなら1時間半……もっと必要かもしれません。
ある意味単調に進んでいきますが、見れば見るほど奥が深いんだまたコレが……(後述)。
もしかしたら観ているうちに知らずしてムーミン沼にどっぷり浸かっている、なんてことが起こるかもしれません。それくらい、シンプルに沼が待ち構えてます。
匠な作者姉弟
ムーミンは、ご存知フィンランド出身の作家トーベ・ヤンソンが生み出しました。
イギリスでムーミンブームが起きて以降、仕事に忙殺された彼女は小説家の弟ラルス・ヤンソンにコミックスの仕事を委託するようになったそうです。作家姉弟ってだけでもすごいのに、二人には彫刻家の父と挿絵作家の母がいるのです。羨ましい家系……納得のムーミンパワーです(?)。
展示をご覧になる際は、画の特徴や変化に注目してみてください。
姉トーベはシンプルで繊細な表現力を、弟ラルスは効果的なコマ割り・配置技術力を、それぞれ見ることが出来ます。
当時の新聞紙の質(今でも大きな違いはないと思いますが)を考慮すると、細かな線や複雑な模様など表現しにくい点は問題だったかもしれません。
それでもシンプルな線で描かれるムーミンはとても新聞にマッチしていた、ということが指摘されています。
そんなことを言いつつ原画をよく見ると、線の厚みに違いがあるのも分かります。新聞に印刷可能な線で描く。うーむ、ようは職人芸というやつだろうか。
こちらもぜひチェックしてもらいたいです。
マニアな視点!? ムーミンの世界
ここまで展示の全体像(沼)と作家の芸術センスについて紹介しましたね。
最後は原画を見尽くして、目から鱗が落ちるという経験をしたポイントを個人的に紹介させてください。
ムーミンの良さについて、皆さんだったらなんと答えますか?
キャラクターのぽってりとした愛らしいフォルム?
それとも北欧のイメージらしい、やわらかくて温かみのあるデザイン?
私が答えるならば「背景」です。
挿絵や絵本であればもっと拝めるところですが、コミックス版のペン画ではコマ自体が小さくて背景描写は少ないです。前述の通り、新聞にたくさん書き込むことが出来ないからですね。
だからこそ背景描写のあるコマに注目してもらいたい。
文庫版「ムーミン谷の冬」より、雪の積もる場所でトゥーティッチとメイの二人の画があります。手押しオルガンを弾くトゥーティッチの周りを、メイが小躍りしている一枚です。
注目したのは手押しオルガンが立っている雪解けの地面。山なりに盛られた土の部分だけ厚い雪が溶けて黒い地面が見えているのです。
雪の厚さといい、水を吸って湿っぽくなった土の感じといい、ペンだけでなんちゅう描き味なんでしょう……。
他にも湖面を歩くムーミンの画ではその限られた枠の中で背景の広大さが遠近法で上手く表現されていたり、洞窟の暗くてデコボコした土壁が線の大小・濃淡で表現されていたり。こういうの本当に大好物なんですよ〜……。
ムーミンを堪能しようと簡単に思いながら入館し、気付けばムーミンよりもムーミンを取り巻く世界に注目して退館してました(笑)。
いや私はここが好きなんだ! というアツい方がいたら、ぜひ名乗り出てもらいたいですね。
終わりに
ヤンソン姉弟によるムーミンの世界は、今もたくさんの方が魅了され、愛されているのを実感させてくれました。
帰りのショップで英語版ムーミン本もゲット出来ます。というか、グッズ展開の規模がまあ大きい。さすがです。
本文から脱線するので書かなかったんですが、展示内に当時の掲載新聞の見開きがありまして。こんな感じでムーミンが載ってたんだよーっていうのが分かる資料だったのがひとつ。
もうひとつは、他にも掲載漫画があってそれがTHEハードボイルドなアメコミでめちゃくちゃ気になりました。
(Matt MarriottとPaul Templeっていう2作品だったはず。誰か知らんかね〜?)
それではまた次の記録が残されるまで、またね〜。
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