vol.6 「グランマ・モーゼス展」

アート

今回もまた知る人ぞ知る画家を紹介したいと思います!

とはいえこの企画展で初めて名前を知りましたが、素朴で心がおだやかになる画風と、それらを生み出す作家の生き方は、この現代でも時代の古さを感じさせません。ぜひこれを機会に知ってください。

それではご紹介していきます!

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企画展情報

開催概要

名称:グランマ・モーゼス展

会場:名古屋市美術館

会期:2021年7月10日〜9月5日

平日の遅い時間を狙いました。雨だったこともあって、ラストタイムの来客数はほぼ数人。

そこまで人多くないかなと思っていたので、休日でなければゆったりと観れるのではないでしょうか。

展示作品について

そもそも誰?

ってそろそろ声がかかりそうなので、モーゼスおばあちゃんについてまずは説明をはさみます(展示を巡った上での内容です)。

お名前はアンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス。1860年に誕生した女の子でした。

彼女は農婦として暮らしていて、絵を描き始めたのは1918年頃。画家として名が広まったのはそれから20年が過ぎた1938年。

78歳のことでした。

彼女はずっと絵を描き続けて、最後の絵を完成させた時はなんと101歳。

“人生五十年”……とうたう敦盛からすれば倍の数です。モーゼスおばあちゃんの人生はとても充実した100年人生なのではと、思わざるをえませんね。

展示会にあるあるのインタビュー動画がありますが、内面に年齢を感じさせない雰囲気の方でした。割り切りも良く、自身を理解しているように見受けられます。良くも悪くも個性を意識する私たちとはまた違うようです。

もし同じ時代に生きていたら、会ってお話ししてみたいと思いました。

ちなみにLIFE誌にも載った過去を持つほど、アメリカでは知られております。私が何も知らなかったように、日本の認知度の差が惜しいですね。

農婦と美しい世界

さて、モーゼスおばあちゃんの残した絵について、ここから語っていきます。

冒頭でも紹介した通り、農家の出だった彼女は農婦として自然と隣り合うように暮らしていました。

現代はサラリーマンの方が多いですから、コンクリートジャングルの空気なんてものは彼女からすれば体に悪そうなんて言われてしまいそうです。

モーゼスおばあちゃんの描く世界はもっぱら風景画で、家の窓から見える景色や農家の人々の仕事の様子を山や森とともに表現しています。自然を描けばその広大さに比例して、農家の人々の姿は人形のように小さくなっていきます。けれどその誰もが生き生きとして見えてくるのです。不思議。

もしあなたが高い建物や山の頂上から下界を眺めた時、仮にそこで捉えた人の心情を読み取ろうとしても難しいかもしれません。

モーゼスおばあちゃんの描く世界には、そんな誰かの心や口にしている言葉が溶け込んでいるのかもしれませんね。それは大自然の中で生きる彼らの生命力なのでしょうか。それとも描き手の想いでしょうか。読み手の夢のようなものなのでしょうか。

モーゼスおばあちゃんは自分が暮らしている世界と、そこで暮らしている自分たちのことを、優しい目で見つめ続けていたんじゃないかなと思います。

ハンドメイドの母のよう

モーゼスおばあちゃんが絵の具で風景画を描くようになる前、刺繍絵をやっていた記録があります。

それまで刺繍絵を見たことはなかったのですが、縫い付ける糸の盛り上がりを上手く利用するという点で、なかなか表現の幅が広い分野だと知りました。

他にも三畳サイズほどの手作りキルトが展示されていました。皆さんも小中学時代に家庭科の授業などで制作したこともあるのではないでしょうか。私自身その覚えがあって、懐かしさを感じました。

農婦として生きていくと、モーゼスおばあちゃんはなんでもすべて手作りです。服やおもちゃなど。

モーゼスおばあちゃんが生きていた時代の人々は手作りすることが当たり前だったのなら、今でも根強いハンドメイドの世界のことを考えると、彼らはハンドメイドの師のように思えてならないのは私だけでしょうか……?(ありきたり過ぎ?)

名古屋市美術館のショップに、モーゼスおばあちゃんの風景画をモチーフにした雑貨が販売されています。彼女の絵はどの雑貨に利用しても馴染んでいました。水玉模様やストライプ柄みたいにまるで一つのデザインとして成立しているように。

それって簡単にできることではないと思うんです。

ものづくりに触れたことがある方が、多少なりとも共感してくれると嬉しいです。

終わりに

モーゼスおばあちゃんについて触れていると、十代、二十代、三十代……と夢がないやら、現実を知ったやら、何かのためにもがく現代人のなんと多いことか、と考えてしまいます。

まぁ実際歳をとってから成功した画家は少なくないのですが……。モーゼスおばあちゃんの場合はとあるコレクターが絵を広めたことで画家になりました。

1939年に、“現代の知られざるアメリカの画家たち展”にて出展された時、彼女は80歳近くで、高齢過ぎて作品を扱ってくれる人は限られていました。

それでもモーゼスおばあちゃんの名前は世に知れ渡っています。

僥倖と言えばそうかもしれませんが、人のルーツは百人百様、将来どうなるかなんて誰も分かりません。

人生は自分で作りあげるもの。これまでも、これからも。

アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス

100歳の人が言うと重みが違います……。しかしその通りだと思いますが、多くのしがらみを持つ私たちはそこに苦心してばかりです。私たちは常に何かの選択をして、酸いも甘いも知っているわけで。

願わくば、今日のこの選択が良いものでありますように(笑)。

皆さん一緒に頑張っていきましょうね。

それではまた次の記録が残されるまで、またね〜。

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